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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1065号 判決 1949年12月23日

被告人

丹羽甚作

主文

原判決を破棄する。

本件を犬山簡易裁判所に差戻す。

理由

弁護人鹿又文雄の控訴趣意は末尾添附の別紙記載の通りである。

右控訴趣意第一点(二のイ)について

原判決が被告人に対する司法警察官の所論聽取書を証拠に採つて同被告人に対する本件犯罪事実認定の資料に供していることは所論の如くであり、原審公判(第一、二回)調書によれば右聽取書については檢察官よりその取調請求をしたのに対し所論の如く被告人並に弁護人において同聽取書の供述内容の任意性を爭い右取調に異議を述べたものであること、これがため原裁判所は一旦その取調の許否を留保したが他の証拠を取り調べた後右聽取書の取調を許容して所論のようにこれが証拠調を行つたものであることは洵に明らかである。而して右被告人の供述を録取した所論聽取書については同被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであることは同調書の記載によつてこれまた明らかであるが刑事訴訟法第三百二十二條により右供述が任意にされたものでない疑があると認められればこれを証拠となし得ないことは所論の如くであり、また裁判所はあらかじめ右供述が任意にされたものかどうかを調査した後でなければこれを証拠とすることができないことも同法第三百二十五條の規定するところであるが、右任意性の調査方法については特別の規定がないから裁判所の適当と認める方法でこれをすれば足り、これがため必ずしも所論の如き特別の証拠調を行う必要がないものと解すべく、原裁判所が前叙の如き証拠調の段階を経て右聽取書の取調を決定して前述のように証拠調を行つたのであるからその間適当に右調査をなしたものと認めるを相当とする。而して同裁判所がその後において更に右任意性につきなおこれを確める必要があると認めた場合これがため特別の証拠調をなすべきは固より当然であつて原審公判(第二、三回)調書によれば原裁判所が右聽取書の証拠調の後においてその作成者である所論奧村房夫を証人として取り調べたことは所論の通りであるがこれはまさに右の必要に出でたものと解すべきである、從て右聽取書の取調前に右証人調をしなかつたからとて同聽取書の被告人供述の任意性についての事前調査を怠つたものということはできない。而して右聽取書の記載内容を右証人奧村房夫の供述記載に照合しその他本件記録を精査するも同聽取書における被告人供述の任意性を疑うべき点は存しないので原判決がこれを証拠とするに毫も妨げないものというべく、されば原審の訴訟手続には何等所論の如き違法の点がなく原判決が証拠とすべきでないものを証拠としたという不法もなく、本論旨は理由がない。

同第二点(二のロ)について

原判決は被告人の犯罪事実として要するに「被告人は判示農業会の理事としてその業務上法定の除外事由がないのに昭和二十二年九月二十七日頃靑木重次郞より判示駅渡で琉安五十叺を不当に高價である金十七万五千円を支拂いこれを讓受けた」と認定して物價統制令第九條の二違反として処断したものであることは所論の通りである。而して被告人が同判示のように琉安五十叺を右代金を支拂つて讓受けた事実はその挙示の証拠によつてこれを認め得られないことはないのであるが、これを右の如く不当高價取引として認定処断したことについては原判文上その理由を知ることができない、蓋し右のいわゆる琉安については原判決挙示の証拠中被告人に対する司法警察官の聽取書中の供述記載並に原審公判調書における証人靑木重次郞の供述記載等に徴すれば右は保証成分量窒素二〇、八%の硫酸アンモニアで一叺正味四十五瓩入五十叺であることが一應窺われ得るのである、果して然らば、これが右当時の指定統制額は昭和二十二年七月十五日物價廳告示第四百号にこれを定めておる(肥料配給公團及び指定肥料取扱業者以外の者の販賣價格については同告示四によるべきものと解する)のであるから右本件取引については寧ろ統制額超過取引として物價統制令第三條違反をもつて処断するを相当とすべきが如くである、從て原判決が前記の如く特に不当高價取引として認定処断するについてはその理由(そのいわゆる硫安を右の規格に該当しないものと認定したとかその他)を適当に示すところがなければならないものというべく、然るに原判決では到底これを知ることができないので結局原判決は理由不備の違法あるものとして破棄を免がれない、故にこの点に関する論旨は結局理由があるものとする。

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